
Vision
コンピュータサイエンスは、 そもそもは “Cybernetics” のような用語に象徴されるように、 「もの」と「もの」との関係、すなわち「インタラクション」の 本質を探求する研究領域として出発しました。 「インタラクション」の概念は、人とコンピュータの関係(狭義のユーザ・インタフェース、あるいはHCI)に留まらず、 人と現実世界、あるいは現実世界とコンピュータ/ネットワーク世界との インタラクションとして敷衍して考えることができます。そこでは情報のみならず 物理的なリソース、環境、あるいはエネルギーなどとのインタラクションを考える必要が あるでしょう。このような発想に基づき、あるべき human-computer-realworld系(システム)の姿を想定し、それを具現化していく活動を行っています。
Research Theme
(具体的なプロジェクトは Projectsに掲載されています)
Human Augmentation
サイボーグは”cybernetic organism”からきた造語で、何らかの手段によって機械と人間が合体・融合した存在です。ロボットのように、自律性をもつ機械が他に存在するのではなく、利用者と一体化したテクノロジーがサイボーグですが、この発想は多くの可能性を持っていると考えています。広い意味では、音楽プレイヤーや携帯電話を肌身離さず持ち歩いている人はもはや「情報サイボーグ」かも知れませんし、眼鏡や衣服ですらも人間の能力を拡張しているという意味ではサイボーグ的と言えるでしょう。
医工学の分野では電子義足や人工内耳などの技術開発 が進展していますが、本研究室では人間とネットワークや情報技術との一体化に着目しています。これをオーグメンテッド・ヒューマ ン (Augmented-Human)と呼んでいます。その第一歩として人間の視覚能力をコンピュータによって拡張するAidedEyes、人間の手指動作を機能性電気刺激(FES)によって制御するPossesedHand、体外離脱視点を小型ヘリコプターで実現するFlyingEyes、人間と人間の感覚をネットワークで接続するJackInなどの研究を進めています。
「人馬一体」という言葉に象徴されるように、究極のテクノロジーは人間と相対するものではなく、人間そのものと一体化し、人間を拡張していくものだと考えています。従来のHCIが人間と機械との界面(Interface)を意識した研究領域だとすると、Augmented-Humanで着目するのは人間と技術との整合(Human Computer Integration)と呼ぶべき領域です。
Augmented Sports
Human Augmentationの大きな応用領域として、スポーツがあります。スポーツと技術の融合は近年急速に発展しつつある分野で、スポーツ視聴、トレーニング、そしてスポーツそのもの発展などの研究を進めています。また、能力差のあるプレイヤー間を仲立ちし、誰もが身体を動かす喜びを得られるようにすることも技術によるスポーツの拡張の目的で、ひいては健康的な社会の創造に寄与できると考えています。このような思想に基づいて、自律飛翔型ボールゲームHoverBallや水泳体験の3次元拡張AquaCAVEなどの研究を行っています。
実世界指向インタフェース
現実世界で生活する人間に対する自然なインタラクション手段を提供します。たとえばSmartSkinと呼ぶシステムはテーブル内に組み込まれた電界センサーによって人間の微妙な手の動きを認識します。Squamaは人間の行動や環境によって透明度が変化する「窓」で、日照やプロバシーの制御などを行います。このようなセンシング技術とインタラクションの融合により、生活環境の多様な場面がデジタル世界と自然に融合していきます。
研究を進めるにあたって
以上のようなテーマは、多岐にわたる基盤技術の上に成り立っています。コンピュータサイエンス・ネットワーク・センシングなどの工学的知見、デザイン、認知心理学、ユーザビリティなどの知見を使いますが、何より大事なのは「未来をイメージする力」でしょう。こんなことが可能になったら世界はどう変化するのだろうか。どんな便利な世の中ができるのか。自分は何が欲しいのだろうか。を大胆にイメージし、それをテクノロジーで具現化していく。必要な知識や技術は目的ドリブンで、どんどん学んでいくという態度が重要なのではないかと思います。
大学院志望のみなさんへ
暦本研は2007年に発足した研究室です。「未来を自ら創り体験する」、をモットーに、国内外のヒューマンインタフェース関連の研究機関・デザイン拠点などとのコラボレーションも進める予定です。チャレンジングな研究を皆さんと一緒に進めていきたいと考えています。
情報学環入試情報 (暦本研は「総合分析情報学コース」に所属しています)
暦本研では、現在 正規学生のみ受け入れており、いわゆる「研究生」の受け入れを行っていません。 研究室に参加を希望する学生の方は、情報学環の入試要項をご参照ください。
Rekimoto Lab currently does not accept “研究生 (research students)”, to join our lab, please consider taking entrance examinations.
- Inforium: IoTからIoAへ。 (NTT DATA)
- Creating a World where Man and Machine are One – The World of Augmented Humans Tansei, vol. 16, The University of Tokyo
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