MaskClipがCEATEC2025にて「CEATEC AWARD 2025」デジタル大臣賞を受賞

https://www.iii.u-tokyo.ac.jp/news/2025102423547

東京大学大学院情報学環 暦本研究室と株式会社村田製作所との共同研究成果である MaskClip (CEATECでの出展名 mask voice clip) が、CATEC2025にて「CEATEC AWARD 2025」デジタル大臣賞を受賞しました。

概要:
MaskClipは、医療環境や感染症発生時に不可欠なマスクが引き起こす音声コミュニケーション問題を解決するデバイスです。マスク着用は特に背景ノイズのある環境で音声明瞭度と認識精度を大幅に低下させます。MaskClipでは、高感度なピエゾセンサーを用いてマスク表面の振動を検出し、着用者の声のみを捉える手法を提案しています。ステンレス製のクリップに最適な位置で取り付けられたピエゾ電気センサーが音声振動を選択的に捉え、周囲のノイズを本質的にフィルタリングします。

評価実験では、ノイズの多い環境でも文字誤り率(CER)が6.1%と従来のマイクの19.7%に比べて優れた性能を示しました。102名の参加者による主観評価でも高い満足度スコアが得られています。

このアプローチは、医療施設、クリーンルームなど、保護具を着用しながら明確な音声コミュニケーションを維持する必要がある場面での応用が期待されます。

MaskClip プロジェクトページ:
https://lab.rekimoto.org/projects/maskclip/

CEATEC出展内容:
https://www.murata.com/ja-jp/events/ceatec

CEATEC AWARD 2025 審査委員会による選評:
騒がしい環境でも話者の声だけを正確に捉える、音源選択性とノイズ耐性とを構造的に両立させているという特徴を持つ。マスクの内側に取り付けられたセンサが発話の振動を直接検出することで、高品質な音声信号の取得を可能にしている。騒音環境下で音声認識の向上など、話者の声だけを認識することにより既存のノイズキャンセル技術を上まわる音声入力の向上が期待できる。製造業や病院といった、騒音環境下やマスク着用が必要な状況での音声入力の次世代インターフェースとして、その活用性が大きく評価された。これまではマスク着用時の発話、音声認識において課題があったが、本デバイスによりマスク着用がネガティブ要素にならないほか、マスクデバイス以外でのソリューションやサイレントスピーチへの応用など、将来的な可能性にも期待が寄せられた。

「CEATEC AWARD 2025」 デジタル大臣賞について:
CEATEC AWARD 2025は、事前に応募された作品の中から、2025開催テーマである「Innovation for All」に合致し、あらゆる業種・産業を網羅した「Society 5.0のショーケース」「デジタルイノベーションの総合展」としての、最も優れたプロジェクト、技術、製品、サービス、またはそれを支えるソフトウェア、アプリケーション、コンポーネント、デバイス等を表彰するものです。「デジタル大臣賞」は、デジタル社会において、個々人の多様な幸せを実現する仕組みやサービスなど、今後に向けた豊かな暮らしと強靭な社会づくりに最も寄与すると評価される応募者を表彰するものです。

参考文献:

  • Hirotaka Hiraki and Jun Rekimoto, MaskClip: Detachable Clip-On Piezoelectric Sensing of Mask Surface Vibrations for Real-Time Noise-Robust Speech Input, Augmented Humans 2025
  • 平城裕隆, 暦本純一 マスク表面の振動計測による着脱可能なリアルタイム音声強調手法の提案 第84回UBI研究会 (学生奨励賞受賞)